【映画】ONE PIECE FILM RED感想-新時代への祈り

ONE PIECE FILM RED感想です!!!

実は公開初日に見に行ったので感想もすぐに書こうと思ってたんですが、例に漏れずこんな時期になってしまいました。もう年末だよ。 とはいえ、公開から半年くらい経った今もまだ上映しているのは本当にすごい。ONEPIECEがすごいのもあるし、FILM REDがすごいのもあるんだと思います。
このまま年明けまでやってて欲しい。
※追記:やるっぽい!うれしい!

私は結局5、6回見ました(うち1回副音声上映)が、年明けにもやっていたらもう1回くらい見たいです。
※追記:見に行きます!

www.onepiece-film.jp

感想要点

  • 映画としてのまとまりがGOOD
  • 音楽・キャラクター性を筆頭に「現代の」ワンピース
  • 麦わらの一味ファンにはちょっと物足りないかも

※ここからはがっつりネタバレです。2022/12/31時点でのWJ本誌バレも含みます。

ストーリー

ストーリー全体

歌姫「ウタ」のライブに参戦した麦わらの一味が彼女の「新時代を作る」計画に巻き込まれ、その計画を阻止する、というのが大まかなストーリー。 こうして書くとかなり簡潔なストーリーラインで、だからこそすっきりとまとまった物語になったんだなというのがよくわかります。 このストーリーがウタがシャンクス(というよりは赤髪海賊団)の血の繋がらない娘であることや、ルフィの幼馴染であることなどの設定で肉付けされてFILM REDになっているわけなんですが、このあたりの設定が絶妙だったのがこの映画のヒットの理由なのかなと思います。

今回の映画で特筆すべきことは、下記の2点。

  • 倒すべき悪役がいなかった
  • ヒロインを(物理的には)救えなかった

2点とも言い切ってしまうと語弊があると思うんですが、あくまで私の感想なのでこういう表記で書かせてもらいました。 この2点がFILM REDが令和的作品であることの大きな要因だったように思います。

また、映画の大ボスをそういう存在にしたのは原作のONEPIECEでルフィが「四皇」の1人となり(映画時点では「5人の皇帝の1人だったかも」)、ここに匹敵するような強い敵を映画オリジナルキャラクターとして出すのが難しいという理由もあるそうで、現行で連載している作品の映画化というのは色々制約があって難しいんだな……と思いました。

ONEPIECEらしさとは

これがFILM REDが好きかどうかをわけた部分じゃないかと思います。
この項目を語るにあたっては「私がどういう状態でFILM REDを見に行ったか」というのが重要だと思うのでそれを書いておきます。

  • 昔空島編まで読んだ
  • 7月の無料公開でW7編~ワノ国編、単行本とジャンプ+で本誌最新まで読んだ
  • 映画の予告編、ウタ日記は見ていない
  • 特別に好きなキャラクターはいない

この状態で「あっ、ちょうどワンピ映画やるんだ!見に行こ!」って感じでいきなり映画を見に行ったのが初回です。 初回の感想は「今のワンピってこんな感じなんだ!すごい!」って感じでした。 この感想は今でも間違った感想ではないと思っているんですが、後々単行本を買って原作を再読して好きなキャラクターができたり(ナミとジンベエが好きです)、過去の映画を見たり(※アマプラで見られる)したら「この状態でFILM REDを見てたら感想変わってたな~」とも思います。 この辺りは個人の評価軸や好き嫌いの話になると思うので難しいところだと思うんですが……。

過去作と比べると気になったのはこのあたり。

  • 映画のメインが「麦わらの一味」ではなく、ルフィ・シャンクス・ウタ
  • そのため、戦闘シーンに物足りなさがある(かも)
  • 他FILMシリーズのようなオープニングがない

FILM REDに関してはメインキャラクターをルフィ・シャンクス・ウタに絞っていることで新規顧客や私のような出戻り勢にもわかりやすかったという点も大いにあるし、それが今回の大成功に繋がったというのもわかっているので、あくまでも「悪かった点」ではないと思っています。
その上で、過去作のような雰囲気やストーリー(特に一味メインであること)を期待していた人にはちょっと期待と違ったなという感想があるかもしれません。私もタイミングによってはそうだったかも。特に、前作がスタンピードというお祭り映画(FILMシリーズではない)だったので、特に違いを顕著に感じるというのもあったんじゃないかな……とは思います。

ただ、これに関しては個人的には副音声で谷口監督が言っていた内容がかなり納得できました。

ざっくり要点だけ書くと「今までの映画と違うことはわかった上で作った」「この映画から見る人のことを考えて作った」「反発があるかもしれないとは思っていた」という感じで、何も考えずにこの作品ができたわけではないし、意識された通り映画から入る人(私みたいな出戻りの人含めて)に対しての求心力は私の周りだけでも感じられたので(そのおかげで5、6回FILM REDを見に行くことになった)、すごく考えられていて、それが成功しているというのがすごいところだなと思います。こういった興行が狙い通りに刺さるってすごく難しいことだと思うので……。

実際、原作の無料公開期間や最終章への突入時期、周年記念の盛り上がりなど全てが嚙み合っていたので、このあたりはホントにすごく計算されていたんじゃないかなと思います。欲を言えば原作無料公開→公開されていない範囲の単行本→ジャンプ+で本誌への流れの中で、最新単行本から本誌に追いつくまでのところがスムーズに行かなかったので(単行本未収録部分を読める特典がジャンプ+にあったので、それはありがたかったんですが、公開期間と公開範囲がちょっと噛み合ってなかった)、そこはもうちょっとストレスなく移行できるシステムがあるといいと思いました。全然有料でいいので。
現状だとジャンプ+で本誌のバックナンバーを買うのが一番一般的かな……。読む方法があるだけでありがたいのはわかってるんですが、ここがスムーズにいく方が双方にとって良いのでは?と思うので改善されると嬉しいです(単話配信とか)。

だいぶ話が逸れちゃいましたが「ONEPIECEらしさ」の話に戻すと、今回は監督の期待する視聴者層の思う「ONEPIECEらしさ」が元々のONEPIECEファン層の思う「ONEPIECEらしさ」と少しずれていたところはあるのかもしれないとは思いました(副音声の内容的に)。ただ、そもそも全ての人が満足できる作品を作るのって不可能だと思うので、難しい……。
この辺は「前回はお祭り映画で、今回はルフィの過去にフューチャーした映画、その次は……」って感じで、その年ごとに色を変えて総合的にみんなが楽しめるエンターテイメントになってくれるのが理想なのかも、と思いました。

shonenjumpplus.com

こうして当たり前のように「次」の話をできるだけで十分幸せなことなんですけどね。

シャンクスの過去 / ウタの存在

FILM REDで一番衝撃的だったのがここだと思います。

私みたいに「今年からONEPIECEを読み始めました!」みたいな人よりも、昔からずっと見ていた人ほど衝撃を受ける設定だったと思うので、ここは本当に思い切ったな……という感情がすごい。

後からキャラクターを「過去にいた」ことにするのって、どうやっても嘘っぽくなってしまうし、それがルフィという主人公の幼馴染であり、彼に大きな影響を与えたシャンクスの娘であるって言うんだから話題性がすごかったのもわかる。
実をいえば映画を見に行く時点では「なんかすごい話題だし、シャンクスってすごい人気なんだな!」くらいの気持ちだったんですが、後々「シャンクスの過去に娘という存在が生まれる」ことはもちろん、「ルフィの過去(しかもコルボ山時代の前)に同年代の女の子が生まれる」ことが大きな衝撃だったんだなと思い直しました。

ルフィって基本的にモノローグのないキャラクターなんですが(SBSにて言及あり)、かと言って過去や思想を全部表に出しているキャラクターでもない。100巻連載が続いていて、海賊王になりたいことはわかっているけど、なぜ海賊王になりたいのかはわからないようなキャラクターでした。 それが、FILM REDと過去を通してルフィの根幹に関わる部分が見えてくるって……、めちゃくちゃデカい事件だったわけです。事前情報でそれがわかっていたわけではないですが、その可能性があった以上、騒がれていたのも納得でした。同時に不安な人がいたのも理解できます。

実際、ウタの存在はうまい具合に(?)、初期のルフィのセリフを拾う形で作られていたことを鑑みると、ここは製作側でもかなり気を使っていたんじゃないかと思います。インタビューなどではこの映画を作るにあたってシャンクスの過去を調整したみたいなことを言っていたと思うので……。

過去に限らず、世界の歌姫であるウタのことをルフィが知らず(一味も詳しくは知らない様子)、かつ、ウタ側にもルフィの存在があまり伝わっていない件についてもルフィたちの修行の2年間を上手く利用していて、そういうところも上手かったと感じました。この辺も設定が割と詰めて考えられている印象。

こうして原作者との連携の上、既存の設定の中にちゃんと組み込めていたことで「ウタ」は(個人の感情や好みの問題はあるとは言え)難しい立ち位置にも関わらずONEPIECEの世界に存在させることができたのだと思いました。実際、これは尾田先生の副音声での発言ですが「映画のスタッフが作ったものをONEPIECEにする」というのがこの作業だったんじゃないかと思います(余談ですが私はこの「ONEPIECEにする」という話が劇場版FILMシリーズのあり方としてすごく納得できたので副音声を機器に行ってとても良かったです)。

こうやって「ONEPIECEらしさ」は作られているんだというのがよくわかる映画でした。
余談ですが、副音声では尾田先生自ら「ここはONEPIECEではなかったね」と言っているシーンなどもあって(でもそこがよかったとも言ってたし、私もそう思う)、なかなかおもしろいのでおすすめ。円盤に収録されて欲しいけどどうなるんだろうな~。

映画のストーリ構成

今回話題になった&印象的だったのはウタ(歌唱キャスト:Adoさん)の歌唱パートがふんだんに使われているところだったと思います。 私は歌唱がメインになる作品でボイスキャストと歌唱キャストをわける方が好きなので、事前情報でキャストが分かれていると知ったときはすごく楽しみだったんですが、ここも好みがあるところだと思います。ちなみに分かれている方が好きな理由は単純に「歌が上手いキャラの歌は実際に上手い方が説得力があるから」で、捻りとかはないです。

www.universal-music.co.jp

劇場で見た感じ、歌の使い方は上手いと感じました。
ウタのライブメインのパートが何曲かあるんだろうな~と思っていたんですが、実際に丸々ライブとして使っていたのは「新時代」と「世界の続き」くらいで(「風の行方」はエンディング曲を兼ねている)、他は戦闘シーンと合わせて使っている部分が多く、「PV見ながら曲を聴いてるだけだと退屈だな~」とはなりにくくなっていたように思います。その「新時代」もライブをしているウタだけではなく一味の方の様子も描写してバランスが取れていたと感じました。

かつ、作中の挿入歌的な使い方ではなく、ウタの曲が流れているときはウタが実際に歌っているシーンというのも合わせるとこのあたりの構成は難しかったんじゃないかと思います。曲の発注やその曲を聴いてから映像側を調整……なんてことがあったんじゃないかと思うだけで苦労が偲ばれます。

また、もう1ヶ所上手いな~と思ったのが、ラストのトットムジカ戦のギミック。
今までシャンクスを映画に出すのが難しかった理由であろう「ルフィとシャンクスは(まだ)会うことはない」という問題をクリアした上で共同戦線を張るために「ウタウタの実の能力で作った世界と現実世界での同時攻撃」という概念を持ってきていました。 これをウタウタの実の力の方から考えたのかギミックの方から考えたのかはわかりませんが、思いついた瞬間めちゃくちゃテンション上がっただろうな……と勝手に思うくらい上手かったと思います。

ちなみに個人的にはこの戦法、ウタがトットムジカを使うことが前提で、ウタがトットムジカを使うかどうかという点がかなり運任せで綱渡りだったなと感じました(ウタがトットムジカを使おうとしているかどうかはルフィたち視点では不明、かつあえてウタを追い詰めてトットムジカを使わせようという作戦は取らなかったように見えた)。このあたりはやや「同時攻撃ギミック>ストーリー」になっていた気がしますが、それでも不自然さは最小限になるように設定や台詞に気を使っていたと思います。

終盤のウソップとヤソップの連携からの怒濤の攻撃シーンは、麦わらの一味(と+α)が赤髪海賊団とリンクすることで彼らがシャンクスたちの実力に近付いていることを感じさせられてどきどきしたし、いつかこのマッチアップで戦う日が来るのでは!?というどきどきもありました(私は最終的にルフィとシャンクスが戦うのではないか?と思い込んでいるため)。

ヤソップには思うところがありますが、それは自分が父親失格だと涙するゴードンさんに自ら声をかけたウソップも思っていたことだったっぽいので私からは言いません。もしかしたら何か理由があるかもしれないし、それは今後出てくるのかもしれないし……。 このシーン、ゴードンさんに声をかけるのがウソップとサンジであるところが細かいシーンにも意味があるのだと感じられて良かった。ねえ聞いてる!? ヤソップ!!! ウソップもっと言ってやって!!!

話を戻してルフィ&シャンクスの同時攻撃。
ここは映画の中でも最も熱いシーンにふさわしく、使われていたBGMも我らが「ウィーアー!」とFILM REDを象徴する「新時代」のアレンジでした。
ルフィ(ギア5)の白とシャンクスの赤がウタのツートンカラーの髪の色を思わせるのもすごくよかったです。ただ、ギア5を入れるかどうかを決めた時期を考えるとこの演出もぎりぎりに考えられたものなのかもしれないですね。それはそれですごい。

その後からエンディングまでの流れについては……今さら語れることなんて……、と思いましたが1点。
ウタの歌声と願いはこれからも誰かに受け継がれていくエンディングで、その歌が必ずしもウタ本人が歌っているものではなく、誰かが彼女の歌を歌っているという描写があったのがすごく良かったと思いました。
ウタの歌(願い)は歌唱データそのものではなく、もっとこう……もっとこう……そういう、形のない……私の語彙力もない……!こんな悔しさもなかなかない……!

あとやっぱ冷静に考えるとゴードンさんはマジで何もかも失ったと言っても過言ではないのに、それでもまだ音楽を愛していてよかったです。
音楽を愛するが故にトットムジカを処分できなかった(そもそも私はトットムジカは処分自体できないものだと思いますが、ゴードンさんの視点で見た話です)と言う話に説得力があったこともそうだし、そんなのは関係なく好きなものを好きなままで次の世代に伝えていけることも良かった。ホントに……よかった……。ゴードンさん心強いな(あと演技力もすごい)。

現実世界とのギャップ、その橋渡し

私はFILM REDがすごく今っぽい映画だったと感じたんですが、これをONEPIECEで(というかONEPIECEのような長期連載作品で)やるのってすごく難しいんじゃないかと思っています。
マンガの中の経過時間と現実世界の経過時間にズレがあるのがその理由で、例えば学園もので「連載当初は高校生が携帯電話を持っているのが一般的ではなかったが、10年連載しているうちに高校生がスマートフォンを持っているのが普通になっていた。しかし、作中では1年も経っていないため急にスマートフォンを持っている描写を入れると不自然になる」みたいな話。 今挙げたのは極端な例ですが、マンガの中の時間より連載中のリアル時間経過の方が早い場合、こういったことはまあまあ起こりえます。携帯電話→スマートフォンのような技術の進化はもちろん、精神的な、いわゆる価値観も時代によって大きく揺らぐものです。

ONEPIECEは元々ファンタジーの世界観なので、科学技術の進化の方はそこまで気にしなくてもいいのかもしれませんが、科学の進歩には価値観の変化はつきものなので全く関係のない話ではありません。
そういう観点で見たときに、ONEPIECEは作中で語られる価値観をうまく現実とすり合わせるのがすげ~うまいなと感じることが多い。

これはONEPIECEがそうして描かれていると言うよりも、「グランドラインの島々はあまり相互干渉せず、独自の文化を持っている」という設定と「ルフィたちが島に上陸→島のいざこざを解決して海に出たときに世界ではこんな変化が……」というストーリーが上手く噛み合った結果な気もしますが、それにしてもめちゃくちゃ上手くできてる。しかも、尾田先生のことなので、長期連載になることを見越してこういう構成にした可能性もなくはないのが怖いところ。

FILM REDにおいては修行のための空白の2年がその文化の進化の穴埋め部分を担ってくれていました。
この2年、もちろんルフィたちが強くなるのに必要な「説得力」として必須の期間ですが、ここに大きな空白を持ってくることで、ここに現実世界の時間の流れも圧縮して詰め込めるというなんとも便利な期間になっています(2年よりは短いですが、最近の本誌ではワノ国の鎖国状態も上手く利用していたと感じました)。
例えば2年前は稀少品だったトーンダイアルが養殖に成功して世界に普及していたり、FILM REDだと配信形式が可能な電伝虫が発明されていたり(試作品なので世界中にあるわけではないらしいですが)と、連載開始時にはなかった文化が生まれています。 これめちゃくちゃ頭いいな……ってFILM RED見る度に思ってるんですが、いや……ほんとに頭いいな……。

映画はこの時間圧縮を利用して、ウタという「情報の発信者 / 歌姫」を作り上げ、故に今作のテーマは非常に現代的……令和的な社会問題を含んだ物になっていたと感じました。
一人の音楽家が、歌姫、偶像としての「ウタ」へと変貌していく様、個人が「みんな」と直接繋がってしまうことの落とし穴、それは現代でなくては共感できなかったテーマだったと思います。

民衆は ”本当に” 愚かだったのか?

私はこの映画を見てから約半年間、ずっとこのことを考えています。答えは未だに出ていないし、多分、この疑問に正解はない。

それでも考え続けてしまうのは、あの世界で傷つき、苦しんでいた名前もわからない誰かこそが自分に一番近いな~と感じたからだと思います。ONEPIECEの映画を見に行ってどこに感情移入してんだって話なんですが、なんかあの観客たちが他人事だとは思えなくて、庇いたくなる気持ちがあるのかもしれません。

でも、あのクソヤバ治安のONEPIECE世界に生まれて苦しんで、「誰か」に縋ってしまったことって……、非難されなければいけないようなことだった!? それが現代日本ならともかく、あのクソヤバ治安のONEPIECE世界(本当にクソヤバなので2回言う)で!? 私だったら多分、「この世界はつらいよ……ウタちゃんの歌だけ聞いていられる世界はないの……?」って絶対に思ってしまう(陰キャなのでコメントはしないと思う)。

なにより、これは小説版の話になってしまいますが、この世界の治安レベルってあの場で演説をしたコビーですら「この世界(ウタウタの世界)から元の世界に戻ることが幸せなのだろうか?」と思ってしまうレベルなわけです。 そういう舞台背景を含めた上で、私は自分のものさしで観客たちの行いをただ愚かだと決めつけたく……ない……!
そもそも、不特定多数に映像と音声を届けることができる機械が一般的ではない世界で急にネットリテラシーについて責めるのも酷でしょう。

少なくとも作中では(作中で描かれなかっただけかもしれませんが)、ウタが救世主であることを望む声はあってもそれを強いる声はなく、ウタは自ら救世主になろうと決意したように見えました(強いていなくても圧力をかけられていた、と言われたらそれまでなんですが……、個々の願いがそれぞれ罪であるとまでは言えないような気がします)。
また、ウタが立ち直った要因にファンの声があったことは事実で、その点を無視して一方的に観客がウタを消費しただけという解釈はできない……! でしょ……!

ウタと観客の間に齟齬があったとすれば、観客は「観客」という1つの生物ではなく、「観客」「たち」という「個の集合」であったことだと思います。
簡単に言えば「本気で逃げたい(ウタに新時代を作って欲しい)」と言っていた人と会場で「え~、そんなこと頼んでないし~」と言っていた人は別の人間だという話で、実際ウタがこれを理解していなかった訳ではないと思うけど……、感情的には受け入れたくない事実であり、かつネズキノコの影響下にあったことを考えると……、ねえ!

そして、ネズキノコの影響で錯乱していた結果、帰りたいと言い出した観客に対して失望や怒り(悲しみかも)が爆発し、最終的にトットムジカを歌うことに繋がってしまった。
これは、ウタ自身が「現実から逃げたい」と感じていて、「みんなも同じ」であると思っていた、もとい「同じであって欲しい」と思っていたからこそ、彼らに対して強く「裏切られた」と感じたんじゃないかなと思います(このあたりは40億巻の内容を加味しています)

じゃあどうすればよかったのか、という点に関して、私はまだ答えを出せていません。 ウタが赤髪海賊団に拾われたこと、ウタの歌声を島中に聞こえるようにしたこと、シャンクスが罪をかぶってエレジアをさったこと、特別な電伝虫が浜辺に流れ着いたこと……、それら1つ1つは悪ではない。
それなのに、全てが重なった瞬間にFILM REDは始まってしまった。

…………。
苦しい!!!!!
悲しい!!!!!
どうして!!!!!

と゛う゛し゛て゛!!!!!(発狂)

FILM REDのつらいところは、その悲劇のどこにも悪意がなかったところだと思います。
「悪いのはトットムジカだけ」、それさえも私は疑問です。ウタがトットムジカに対して「お前も寂しかったんだ……」と漏らしたこと、トットムジカの正体を踏まえると、トットムジカは破壊者ではあったかもしれませんが、それが「悪意」であったとは言い切れないでしょう。

映画のプロローグで私たちは問いかけられています。
「力なき人々は、何に縋ればよいのだろう」と。
その答えの一端はシャンクスの「人はそんなに弱くはない」というセリフから伺うことができます。

そして、全てが終わった後にこの映画のロゴが表示され、ルフィの「海賊王に、おれはなる!」というセリフでこの映画は幕を閉じました。

これは私の予想ですが……、この映画がONEPIECEという作品のプロローグであるなら、その答えはきっとルフィの夢の先にあるんじゃないかと思います。と言うよりも、そうであって欲しいと願っています。

ウタの、ルフィの幼なじみの願いがどうか、この先の未来で叶いますように。彼女の願った新時代で、彼女の歌が響く日がやってきますようにと、私は祈らずにはいられません。

そしてそんなONE PIECE最終章を……、よろしくお願いします!!!

ホントに!!!マジで!!!面白いから!!!

現時点で104巻も出ているマンガを人に勧めるのって本当に酷だと思いますが、本当に面白いので……どうか……。電子で買うときはモノクロ版とカラー版があるので気を付けて買ってね(モノクロ版の方が発売が早いです)。

またトチ狂って半年もかけて映画の感想を書いた上に最後がポエムになってしまった。
ここまで読んでまだFILM RED見てない人はいないと思うんですが、万一いたら見に行きましょう!!!元旦からはウタの年賀状もらえるみたいです!!!

よろしくお願いします!!!

余談

2022年最後の更新になってしまいました。
来年はもっとたくさん更新できるように頑張りたいです!来年もよろしくお願いします!