【観劇】る・ぽえ-三人の詩人の物語

基本情報

【作品名】
る・ぽえ

【日時】
2020/01/25 15:00~

【劇場】
新国立劇場小劇場

【上演台本・演出】
鈴木勝秀

【キャスト(敬称略)】
碓井将大、辻本祐樹、木ノ本嶺浩、林剛史、加藤啓

高村光太郎「智恵子抄」をモチーフにした夫婦の話、萩原朔太郎「月に吠える」をメインにした多趣味な朔太郎の奇想天外な話、中原中也の人生と恋愛を通して描くダイアログ。 “詩”を通して描く3人の詩人の物語。
http://le-himawari.co.jp/releases/view/00868

感想

淡々と、時には激情をぶつけるように朗読される高村光太郎の「智恵子抄」、手品やダンスを取り入れてコミカルに作家生活を描かれた萩原朔太郎、同棲していた女を失って荒れ果てる中原中也の悲壮な人生、三者三様の詩人の「在り方」を中心に描かれた舞台。(ちなみに三人以外にも北原白秋や室生犀星、小林秀雄などが登場する。)

三人の詩人の姿をオムニバス形式で表現すると言うよりは、オーバーラップするように時間軸を重ねて表現していたのが印象的だった。彼らの人生をストーリーとして展開とするというよりは、その生き方を舞台上で「演出」している、と言った方がしっくりくる。その演出の一つとして合間合間に作品の朗読が挟まるのがよかった。
ただ読み上げるだけでなく、音楽や暗闇、逆に光を使った演出で観客を世界観に引き込む魅力があったように思う。

強いて言えば個人的にはシリアスなシーンとコミカルなシーンが上手く噛み合っていないように感じて、そこが少し気になったかも(あくまで個人の印象なので好きな人は好きだろうな、という印象)。

特によかったのは中原中也の演技。
女に捨てられ、しかし自分は女を捨てることもできず、その上東京での限られた友人を失い、苦しむ演技がとても心に残った。思わず感動して、中原中也(文スト)推しの友人に連絡してしまった。

また、舞台演出上、最前列と役者さんの距離がだいぶ近い舞台で、おそらく(私の気のせいでなければ)、匂いも利用していたように思うので、距離の近いタイプの舞台が好きな人にはたまらないだろうな、と思った(私はあんまり距離が近いと「向こうからも見えている」感があって苦手なので、ある程度距離のある席で観劇できてほっとした)。


雑記

あまり見ないタイプの文学表現に触れられて全体的に良い舞台だったものの、だいぶ良くなかったのは新国立劇場小劇場の座席でした。板に薄めのクッションが乗っているタイプの座席なので、最初は大丈夫そうでも後々結構お尻が痛くなるのがつらい。今回は90分だったので助かったけど、これより長い舞台を観劇するときは覚悟を決めて行こうと思ったくらいでした。

今年1発目の舞台は「る・ぼえ」だったけど、8月にもる・ひまわりの新作公演があるみたいなので気になるところ。
そういえば、あんまり観劇に関係ないんですが新国立劇場の小劇場に入る前の景観ってちょっと終末観があって好きなので、今後行く人はその辺りにも注目してみて欲しいです(?)。思ってるのは私だけかもしれないけど、なんか毎回そう思うので気になる人は見てみてください。

参考文献

  • 高村光太郎「智恵子抄」
  • 萩原朔太郎「月に吠える」
  • 中原中也「山羊の歌」

ちなみに、「智恵子抄」は内用が普通に気になったので青空文庫で公開されている分を触りだけ読んでみたんですが、普通にだいぶ悲しい気持ちになったので、余裕があるときに全文読んでみたいと思っています。